1987年公開のドキュメンタリー映画です
奥崎謙三という、太平洋戦争のニューギニア戦地から帰ってきた男についての話です
マイケルムーア監督はこの映画を「生涯観た映画の中でも最高のドキュメンタリーだ」と語っています
出だしの結婚式から頭がクラクラしてきます
極左翼の街宣車(書かれてることは田中角栄を殺すというもの)のような車で結婚式に向かう奥崎謙三
祝辞では「ま、皆さんにとっては国家なんてものは、大切なもんでしょうけど、私の人生経験からいきますと、国家というものは、ま、日本だけじゃありませんよ、世界中の国家というものは、人間をですね、断絶させるもんだと。人類を一つにしない、一つの大きなね、障害だと思っています、国家というものは、一つの壁。ま、更に言えば、
家庭もそうだと思っています」
なんだか自分の価値観が崩壊する音が聞こえてきそうです
しかしながら、結婚式でこれから家庭を作っていこうとする人に向かってなんてことを言うんでしょうか
この人からヤバい香りがプンプンにおいます
物語が進むと本題に移り、上官達が戦争下で犯した罪の責任を追及することになります
奥崎謙三の今までの突飛な思想や行動が、戦争という異常な状況での経験から起こされたものだと徐々にわかっていきます
そしてニューギニアでの悲惨な事件に触れていきます
何かがあったことを「忘れたい」人と「確かめたい」人が本気でぶつかり合う姿は、ドキュメンタリーだからできる異様な雰囲気につつまれています
戦争の当事者であり、戦友がなぜ死んだかを追求する奥崎にとっては「忘れたい」「聞きたくない」ではすまないんだと思います
その思いが強すぎてキ○ガイじみたところがありますが・・・
「私はやりたいことをやる、あなた方も自分の仕事をすればいい」と警察に向かって言う奥崎はやはり覚悟を決めているんだと思います
「社会にとって利益があることなら、私は責任を持って暴力を振るう」と豪語してます
それだけ言うあって、暴力を振るうシーンでは自分から警察を呼ぶか?と言って電話を自分からかけます
はっきり言って、よくわからないシーンです
他にもよくわからないシーンが多いです
ただ、餓死して亡くなった戦友の墓前で、炊き立てのご飯と梅干しやたくあんなどのおかずを供えて弔っている姿には心に訴えるものがあります
共感は得にくい映画ですが、ただひとつ言えることは戦争の被害というのは果てしなく深いものなんだと思います
生きて帰っても残した傷跡はとても大きく、奥崎の人生を狂わせたことは間違いないと思います